当犬舎の断尾に対する考え方

断尾とは読んで字のごとく尻尾を切る事です。
断尾をする習慣は全犬種の25%の位の犬種で見られます。

良く見かける犬種としてはヨークシャテリア、プードル、コーギー
ドーベルマン、ボクサー、コッカースパニエル、OESなどなど

では、なぜ断尾と言う行為が習慣になったのでしょうか?
断尾をする理由の多くは必要性に駆られたものでした。

ガンドック(猟犬)の場合は、藪の中に入った際、尻尾は傷を
負いやすく止血しにくい、また化膿しやすい。

また、長い尻尾が動くことによって獲物(鳥類)に犬の存在がばれてしまう。

ガードドック(警備犬)は尻尾はつかまれやすく
攻撃の対象になる為、ウイークポイントは
無い方がいいと言う理由です。

OESに至っては納税の証として切られていました。

現在では実猟に使う事があるでしょうか?
実猟に使われている犬を見たことがありますか?
ほとんど見かける機会はないと思います。

現在猟犬として仕事をする事など
ほとんどなく、納税の証なんて愚の骨頂です。

現在では断尾の必要性がある犬種など
ほとんどいないと考えられます。
しかしながら、断尾は“習慣”として
未だに残っています。
必要のない“習慣”によって犬達は苦痛を受けています。

では、なぜこの悪しき“習慣”が今もなお残るのか
その理由の大きなものの一つに
スタンダードと呼ばれる耳の形や目の形、
各関節の角度などが書かれている犬種標準書
の中に断尾という文言があるからです。

それに従いブリーダーは断尾をしてきました。
特にショーに出ている犬達は当然のように
断尾しています。

最近ではスタンダードも変化の兆しがあり
『断尾をする』と断言されて書かれているスタンダードは
少なくなり『断尾は任意』とか断尾しない場合の
長さの目安などが書かれるようになってきています。
それに伴い、ショーの審査でも断尾している、していないは
審査の対象にならないとされています。

尻尾がない犬を見て生まれつきないと思っている方も多いようですが
生まれつきない個体はほとんどいません。
みんな生後数日のうちに切られてしまいます。

生後間もない時期に切るのは痛覚が未発達で
子犬は痛みを感じにくいとされているためです。
しかし、最近では生後間もない時期でも痛覚は発達している事が
わかってきています。当然ですね、痛みを感じないと言う事は
自分で身を護る事が出来なくなりますから。

いざ、切り落とすと子犬は泣き叫びます。
ギャーギャーヒンヒンと・・・
もちろん麻酔などしません。
生後間もない子犬に麻酔をかけるのもリスキーです。
痛覚がないなんてことはありません。
切り落とした後も悲しそうな声で泣いています。
ピーピーと・・・

動物愛護の観点から、ヨーロッパを中心とした
多くの国々では法律により断尾を禁止した
国も増えてきました。

残念ながらアメリカや動物愛護の精神の低い
日本は法によって禁じられてはいません。

日本では動物愛護管理法という法律の中で
みだりに動物を傷つけてはならないと
なっていますが断尾はそれに当たらないのでしょうか?

公園などで足が切断させたり、目が傷つけられていたりしたら
テレビや新聞で動物虐待と騒がれて、検挙の対象になります。
断尾も変わらないと思うのです。

当方がブリードしている
イングリッシュ・コッカー・スパニエル(以下インギー)の
原産国であるイギリスでも断尾は法律により全面禁止になりました。
断尾をしている個体はショーでも失格になります。
イギリスはヨーロッパ諸国の中でも断尾や断耳を禁止することに前向きでなく
近隣諸国から圧力をかけられていたようですが
数年前から全面禁止になりました。

イギリスが全面禁止になった事もあり今後、日本に輸入されてくる犬達も
尻尾があるのが当然と言う事になっていく事でしょう。。

JKCに確認したところ、原産国の意向を最大限に考慮する
と言う事ですから、次回のスタンダード改正時には
インギーのスタンダードに断尾の言葉はなくなる事を期待します。

当方でもインギーのブリードの度に
断尾を行ってきました。
毎回釈然としない何とも言えない感情の中で・・・

毎回毎回悩んで切ってきました。
生まれたばかりの子犬に苦痛を与え
断尾する必要性はあるのか?
自分自身がやっていることに正当な理由はあるのか?

でも切らないことで将来、インギーとして認められない状況になったり、
尻尾があることで『ホントにインギー?』などと
誹謗中傷を浴びるような事があるのでは?・・・
これもインギーとして生まれてきた運命・・・
我慢してくれ・・・と思いながら切ってきました。

断尾をする事で犬種として完成する・・・
昔から伝わってきている、その犬種としての伝統・・・
断尾をするのが嫌なら断尾犬種をブリードしなければいい・・・

今回も色々悩んだのですが、自分の中で断尾をする正当性を見つける事ができません。
熟考した結果、2008年頭より当面の間、断尾をしない事にしました。

世界基準で断尾しない方向に動いています。
このまま行くと断尾という習慣は近い将来
なくなると思います。